万物に片想い!!(byチクボン)

プログラマーのIT関係ない個人的なブログ

*海溝*

 

どうか透き通って欲しい

 

ただただ、それだけを切に願う

言葉を 壁を 草や木や空を

この目に映る様々なものを

どうか透き通って欲しい

 

分裂する思考

分析する思考

とめどなく溢れる雑念を

どうか透き通って欲しい

 

息をしていた。

 

深い深い 海溝の前で。

そしてそれは本当にただの

ただの頼りない白線だということも

ずっと前から分かっていた

軽い足取りで簡単に飛び越えてしまえる簡単な話だということを

 

ずっと前から分かっていた

 

頼りなく私を守る白線は

いつだって私の判断を試している

じっと両の目で私を見つめている

 

もういっそ、狂ったフリをして

飛び越えたことも自覚せずに

飛び越えてしまえばいい

けれどその瞬間、思い出すのだ

 

狂ったあなたを見たとき

同胞だと思った

 

私は、あの人を知っている

あの人は、私を知っている

私は知っている

一度狂ってしまえばずっと狂い続けなくてはいけないことを

みんなの中の狂った私を裏切らないために

 

弛んだ笑顔の目の端が

一瞬、黒目だけで辺りを必死に確認する

その視界にきっと、あなたを見る私が写る

その一瞬の隙間にあなたという人の本当の顔を見る

あなたは目をつむり、空を見上げ

そしてそれまで以上に

激しく狂い、笑った

 

ベージュの女と黒いコートが

あなたを避けるとき

きっとあなたは やはり狂い続けなくてはいけないのだと

その確信を強めるだろう

 

もう大丈夫だよ 疲れたろう

大丈夫、大丈夫。と

周りがあなたの背中をなでるとき

あなたは素直に泣くだろう

 

それくらいあなたは普通の人なのだろう

 

あなたは物心つく前にたっぷりな愛情をうけた

そして物心がついた時には、既にそうはいかない状況の中にいた

かすかに残ったあの匂いを求めてあなたはさまよいだしたのだ

だって私の求める愛情の絶対量はとても大きくなっていたから

 

あなたがまだ戦っていたころ

あなたが心の中でつぶやいた言葉

 

かりそめは射殺

安寧は撲殺

救いの手は手首から切り落とす

 

その言葉が、既に嘘であることを

はっきりと自覚できてしまったときに

ふっつりと糸が切れてしまった

自分が向けた銃口が気づけば後頭部にあったのだから

 

透き通って欲しい そう思った

 

確かなものを求めた

混じりけのない透明を求めた

生きていることは自然現象で

自分は肉の塊だということを認識したとき

今まで見ていた世界は崩壊し

絶望し そして気が楽になった

 

砂漠に舞う砂ぼこりの一粒になり

雨に濡れた木々の葉の一枚になり

喫茶店にこぼれたオレンジジュースになった

 

すべて認識できたはずの世界で足元を見たとき

私はまだ白線を飛び越えられていないことに気づく

 

ただ、息をしていた。

 

深い深い 海溝の前で。