今という檻に閉じ込められている。
私の身に起こる楽しいことは
全部レプリカで
本当の人生はずっと来月あたりに公開予定で
夢っていうのは文字通りの幻で
映画やドラマによると人生は大層なものらしくて
周りの人によれば飯が食えれば御の字らしくて。
私は懲役何年かわからないけど罰を受けていて、それは人間たるものになるまで終わらなくて。
汚れた手を見る度にここからはいつ出られるのだろうかと、いつ未来に行けるのだろうかと途方にくれて、私が今を終わらせればその時初めて未来に行けるのではないだろうか、今が延々と続くから未来は来ないのではないかと思ったりする。
私が手に持っているスコップを地面に突き立てて背を向けて走ったとして、その地面はどこまでもこの世界のもので、私は喉が渇くたびにこの星に生まれたことを呪うのだろう。
私が死んだとき初めて私の体は光ほどの速さで別の世界へ行くことができる。
そうでもしないと私は檻から出られないのだ。
私にとって、今というのは檻なのだ。