万物に片想い!!(byいわしー)

役者でプログラマーでなまけもののブログ

*小さな光とスポットライト*

本当に真っ暗で、

ほとんどなにも見えないくらいの小さな明かりだけがあって、

やっと聞こえるくらいの小さな声で話して、

セリフをいいあったり、触れあったりしていた。

本番が始まる前。出番を待っている時。

そんな時間が、愛おしかった。

 

目に映るこのシーンは映画にはなることはない。

なったところで売れはしない。

だって、この綺麗さは、この愛おしさは

社会的価値だってない。

歴史的価値だってない。

この綺麗さは、この美しさは

私たちにしかわからない。

だから、たまらなく愛おしかった。

 

水が流れるように、葉が落ちるように、

この時間は数分後には、数秒後には

取り戻せなくなる。

ずっと忘れたくない。そう思って、

この瞳で何度もシャッターを切って、

何度も胸にしまった。

 

忘れないよ

忘れちゃうんだよ

そっかあ

ごめんなさい

 

本当にそうだ。ごめんなさいと思うんだ。

だって、

私が忘れてしまったら、もうこの時間は

もう私の胸のなかですら生きていけないんだ。

そう思うと、のどのあたりが詰まるくらい

今この瞬間、離れたくないと思うんだ。

 

出番が来て、暗闇から光の中に踏み出していく、

孤独な姿を見るたびに、本当に勇気のある人たちだと思った。

 

やってもやらなくてもいいこと。

背負わなくてもいいリスクをなぜあえて背負うのか。

それだけのリスクを背負って本当に見た人に伝わるかどうかはわからない。

数式やプログラムのように誰から見てもわかる答えなんてない。

 

ただ、信じているだけ。

物語、仲間、演劇、みてくれる人、

いろんなものを信じて、

そして自分の信じる力を信じて。

 

スポットライトにあたるとき、

今までの人生、人間関係、

自分の名前はすべてなくし、

自分の肉体、声、心だけを残して、

それを使って役を演じる。

 

暗闇の中で、顔と顔を見合うとき、

お互いの人生も、人間関係も、

名前も、目に見えない色々を、

知ってくれている人がいる。

それがどんなに心強いか。

 

小さな光とスポットライト。

その両方に照らされた。

わたしは幸せだった。

小さな光に頬を照らされたその顔の写真は、

私の胸の中でいつまで生きていられるか、わからないので、

こうやって書き残しますので、あなたの心で現像して、

どうか一日でも長く忘れないでいてください。

そして時々眺めてください。

 

『小さな光とスポットライト』